米国をおそったハリケーンの被害は前代未聞だ。1965年頃に一度この地域は同じようにハリケーンに襲われ、水没し、甚大な被害を被っている。その直後から堤防を高くするという計画があったにもかかわらず、途中でそれは中止されたらしい。
ハリケーン襲来直後から政府の動きはにぶい。また州の責任者がテレビで語る内容は無責任そのもの。避難できない人々がおよそ10万人もいることを知りながら、なにも対策や準備もせず、「我々の被害予想を上回った」と言うばかり。予想を上回った被害がおきたのならば、それ以上の複合被害を防ぐために、尽力しなければならないのに、その対応も後手に回っている。
ブッシュ大統領の頭の中には石油のことしかないのか、記者会見でもその話題ばかりだ。
一方、住民達の暴動もエスカレートしている。完全なるモラルハザードだが、ここまで手をさしのべなければならない政府が生命の保証をしてくれるわけがなく、送られてくるのは軍隊ばかりなら、キレても当然かと思ってしまう。もちろん略奪や、暴力は火事場であっても許されるわけがない。
昔、江戸の街は火事は頻繁に起きた。ある時、牢獄に入れられている犯罪人達が焼け死んだために、火事が起きて牢獄に火が回ってきたときには、犯罪人達には、火事が収まると牢獄に戻ってくるように通告されて解放されたそうだ。ほとんどの犯罪人達は、火事場を生き延びて戻ってきたという。
今回のハリケーン被害後の悲惨な状況を見ていると、貧困や人種の違い以外に、米国民族としての誇りや、意識といったものが希薄なのだろう。もちろん州政府の役人達も、政府の人間も同様だろう。あるのは米国という大国としての誇りだけだ。この大国意識の誇りの輝きが、アメリカの暗部そのものを照らし出している。そのことに気がつかないのだろうか、米国大統領は。