村上龍「69」。妻夫木聡主演、李相日監督、宮藤官九朗脚本で映画化され、公開中映画の原作である。村上龍が実際に高校生の時に起こしたバリケード封鎖事件は、僕が高校生の時にも伝説として語り継がれており、低俗的な衝動や、高尚な熱き思いを素直に表現し、社会にぶつけていくと言うことが素晴らしく、楽しいということも、伝えられていた。幸いにも僕が通った高校はバンカラな風土が根強く、個人個人の主張をきちんととりあげてくれる先生方が多い学校だった。そのため、比較的自由な生活を送ることが出来た。「69」を読んで、そんな自身の高校生活の隅々まで、みずみずしく思い出すことが出来た。この「69」が収録されている村上龍全集の第1巻目にはこれ以外に彼の初期の作品が連なり、時系列的に高校生から大学生という村上龍の成長する眼で騙られた物語が掲載されている。シャープで、切り口がするどい映像を見せられるような村上龍の文体は、僕の記憶や、その時の感情だけでなく、においまでも呼び起こしてくれる。読むのに時間のかかる作品ばかりだ。