舞台は江戸時代。妖(あやかし)が大店の薬問屋の手代で、若旦那が巻き込まれた事件から助けていくという話。このような小説は初めてだったので、不思議な世界に惹き込まれてしまい、一気に読み上げてしまった。妖怪や化け物といえば、怖いとか憎悪といったようなダーク面ばかりが強調されていくが、人間と同様、良い面も悪い面もあるという視点がとても気持ちがよい。良い悪いという判断はあくまでもその時点やその人の価値観で決まっていくことであり、絶対的ではない。自然と物語は複雑さをもってくるが、ある視点を得ると、それらがすーっと解けていく。爽快感をも感じさせるストーリー展開と文体である。若旦那と妖(あやかし)手代2人の3人組は、今後も様々な事件に巻き込まれ、解決していくのだろうか? 是非シリーズ化してほしい、そんな物語だ。